一か月ぶりに息子からメールが来た。
「最近どう?」と、こちらの様子を気遣いつつ、
おねだりの内容だった。
子どもみたい。
そう言えば、子どもたちが小学生の頃、
月に1度のペースでコストコで買い物していた。
当時の職場の同僚がコストコのファンだった。
コストコでホットドッグがとてもお得とか、
店が倉庫みたいとか話を聞いて、行ってみたくなった。
夫に運転してもらって、子どもたちも連れて福岡県の久山町にあるコストコへ行った。
私の記憶では、初回はキャンペーンで会費が無料だった。
店の雰囲気は、日本じゃなくアメリカみたいだった。
大きなカートを押して通路を通りながら、キョロキョロと商品を見て回った。
試食コーナーに人がたくさん集まっていて、
栄養ドリンクは一本ずつ試飲として手渡された。
肉の試食コーナーでは、肉が焼けるのを待つ人が大勢いた。
すごく安くはないが、家の近くで買えない商品は魅力的だった。
商品はどれもこれもジャンボサイズ。
特に、ビーフジャーキーは記憶に残っている。
一袋に入っている量が、すごく多いのに驚いた。
店の雰囲気に影響されてだろう。抵抗なく買った。
美味しいが、食べ過ぎたなあ。ビーフジャーキーを。
息子も、同じ記憶があるのかな・・・。
少し嬉しくなった。共通の思い出があるのは嬉しい。
なんとかして、コストコのビーフジャーキーを買って送ってやりたいと思った。
今の私は久山町へ行く気力体力がない。
近くの店でなんとかならんか・・・と思い巡らし、
コストコの商品を取り扱っている店があったのを思い出した。
そのひとつはスーパー。ひとつはホームセンター。
そのホームセンターは徒歩で行ける距離にある。
身の危険を感じる暑さの中、私は行った。
10分ほどで到着。
記憶していたように、コストコの商品が棚に並んでいた。
ビーフジャーキーも目立つところにあった。
けれど、1袋しかなかった。
私は最後の一つを買って棚を空にするのが嫌だ。
なぜか罪悪感を感じるからだ。
私が買うことで、他の誰かに迷惑をかけてしまいそうな気がして躊躇する。
「最後のひとつを買うのは嫌だなあ」と心の中で呟いて、
ビーフジャーキーをカゴに入れた。
「これは息子に送るんだから、良いんだ」とも呟いた。
奇妙な葛藤だと思う。
多分、子どもの頃や若い頃、
「欲しいものを手に入れてはならない。他人に譲れ」という呪いをかけられたんだと思う。
欲しいものを買うとき、特に最後の一つだった場合に
心の奥で「他人に譲れ」という呪いが発動するんだな。
コストコで買い物するなら、最後の一つを買うという経験をしないが、
ホームセンターではそれを経験する。
コストコじゃないから、仕方ない。
まあ、目当てのビーフジャーキーを買うことができて、
息子に送ることができて良かった。
「欲しいものを手に入れてはならない。他人に譲れ」という呪いがかかっているのは
私だけかな?
他人に聞けるなら尋ねてみたい。
「最後のひとつを抵抗なく買えますか?」